9月も大忙しです。たくさんの依頼原稿や学会発表依頼など頂きまして、前にもまして私の考える肌育とはなにか?と日々考えています。

久しぶりに、八重洲形成外科美容皮膚科でスネコスを用いた肌育の医師向けセミナーを開催しました。たくさんのお申込みをいただき、ありがとうございました。
今回ご参加いただけなかった先生方へ向けて、2回目の開催も予定していますので、ぜひまたご参加ください。
肌育とは何でしょう
ところで最近、「肌育」という言葉を目にする機会がとても増えました。
肌育注射、スキンブースター、肌質改善注射など、さまざまな名前の治療も増えています。
ただ、私が考える肌育とは、特定の注射や製剤の名前ではありません。
私は以前から、美容医療を「今あるシミやしわを取る」「形を変える」だけのものではなく、皮膚そのものが長期的に健やかに代謝・更新していける環境を整える治療として考えてきました。
肌育とは
つまり、レーザー、IPL、RF、HIFU、注入治療、外用治療をそれぞれ単独で考えるのではなく、
表皮、基底膜、真皮、皮下組織と、皮膚を細かく因数分解しながら、その人に必要な治療を組み合わせていく。
それが、私の考える肌育です。
今回はその中でも、スネコス(SUNEKOS)とアミノ酸について、初心者の方にもわかるようにお話しします。
肌は「完成品」ではなく、常に作り替えられている
まず大前提として、私たちの皮膚は、一度できたものがそのまま残っているわけではありません。
表皮では新しい細胞が作られ、角層へと移動し、やがて剥がれ落ちます。
また、真皮でもコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス(ECM)が、作られ、分解され、再び作られるという代謝を続けています。
つまり皮膚は、
「作る → 壊す → また作る」
という更新を繰り返している組織です。
肌育とは何かを考えたときに大事なこと。それは皮膚は更新を繰り返している組織であるということです。
しかし、年齢とともにこのバランスは少しずつ変化します。
線維芽細胞の数や働きが低下し、コラーゲンやエラスチンの産生が落ちる一方で、分解は進みやすくなります。
そのため美容医療では、単に何かを足すだけではなく、皮膚が本来の代謝と更新を続けられる環境をどう整えるかという考え方が重要になります。
これは、私が「肌育とは?」という、長く伝えてきた考え方の中心でもあります。
皮膚を作り直すには「刺激」だけでなく「材料」も必要
美容医療では、「刺激を与える」という考え方がよく使われます。
たとえばレーザーやRF、HIFUも、適切な刺激を与えることで皮膚のリモデリングを促す治療です。
ただし、組織を作り直すには、刺激だけでは足りません。
新しい組織を作るための材料も必要です。
そこで出てくるのが、アミノ酸です。
そもそもアミノ酸とは?
アミノ酸は、タンパク質を作る最小単位です。
少し乱暴に言えば、体を作るレゴブロックのようなものです。
アミノ酸がいくつかつながるとペプチドになり、さらに長くつながり、立体的な構造をとるとタンパク質になります。
皮膚を支えているコラーゲンやエラスチンもタンパク質です。
つまり、その原料をたどっていけばアミノ酸に行き着きます。
そしてアミノ酸は、決して特殊なものではありません。
たとえば、
- グルタミン酸は「うま味」で知られるアミノ酸
- グリシンには甘味がある
- アラニンは貝類や日本酒のまろやかな味にも関係する
- ロイシンやバリンは、筋肉のタンパク質合成にも関係するアミノ酸
というように、私たちは毎日の食事の中でアミノ酸に触れています。
さらに、私の大好きな日本酒の味わいにもアミノ酸が関係しています。
日本酒のうまみやコクにはアミノ酸が関与します。一方で、私は米をよく磨いた、すっきりした日本酒が好みです。
米を磨くほどタンパク質が減るため、アミノ酸も少なくなりやすいとされています。
つまり、アミノ酸は多ければ多いほどよいわけではない。
このあたりも皮膚と少し似ていて面白いですね。
また、発酵食品では、
タンパク質 → アミノ酸
へと分解されます。
一方で、皮膚では逆に、
アミノ酸 → タンパク質
という方向に合成が行われます。
つまり、コラーゲンやエラスチンを作るにも、まず材料が必要なのです。
「体の中で作れるアミノ酸なら、わざわざ補う必要はない?」
ここでよく出てくる疑問があります。
アミノ酸には、食事から摂取する必要がある「必須アミノ酸」と、体内で合成できる「非必須アミノ酸」があります。
では、体内で作れるものなら、いつでも十分なのでしょうか。
実際の生体は、そこまで単純ではありません。
作ることができることと、必要な場所に、必要なタイミングで、十分量が供給されていることは別です。
このことが非常によくわかるのが、重症外傷や大きな熱傷のときです。
体は、傷を治すために筋肉まで分解する
大きな外傷や熱傷を受けると、体は非常に強い代謝ストレス状態に入ります。
その際、傷ついた組織を治すためには、新しいタンパク質を大量に作る必要があります。
当然、その材料としてアミノ酸が必要です。
そして必要量が非常に大きくなると、体はなんと、自分の筋肉のタンパク質を分解してアミノ酸を取り出し、それを組織修復に利用します。
つまり、筋肉は非常時にはアミノ酸の貯蔵庫としても使われるわけです。
もちろん、これは重症外傷や熱傷における全身代謝の話なので、普通に生活している人にそのまま当てはまる話ではありません。
ただ、ここからわかることがあります。
組織を作り替えるには、細胞への刺激だけではなく、作るための材料も必要である。
この視点は、肌育を考えるうえでもとても重要だと思っています。
ちなみに、当院の江花先生は、これまで重症熱傷や外傷をメインに診療されてきた先生なのですが、いつもアミノ酸補助食品を摂っています。
江花先生を見た方ならわかると思うのですが、皮膚がパーンとしていて、とても若いんです。
そんな彼女に刺激されて私も買って飲んでいるのですが、つい忘れてしまうので、なかなか江花先生のような肌にはなれません。
注入も内服もがんばります。
スネコスとは?ヒアルロン酸と6種アミノ酸を組み合わせた肌育治療
では、ここでスネコスの話に戻ります。
スネコス(SUNEKOS)は、非架橋の低分子ヒアルロン酸と6種類のアミノ酸を組み合わせた注入製剤です。
スネコス Performaには、
- 200 kDaの非架橋・低分子ヒアルロン酸
- 6種類のアミノ酸(HY6AA)
が配合されています。
6種類は、
グリシン、プロリン、リジン、ロイシン、バリン、アラニン
です。
一般的なヒアルロン酸フィラーは、ヒアルロン酸をある程度長く組織内に残し、ボリュームを補ったり、輪郭を整えたりすることを目的とします。
一方で、スネコスは「入れたヒアルロン酸を残して形を作る治療」ではありません。
スネコスの本質は、200 kDaの低分子HAが水和環境や細胞への刺激の「場」を作り、6種類のアミノ酸がECMを作る材料やシグナルを補う、という設計にあります。
なぜスネコスは6種類のアミノ酸なのか?
スネコスの6種類のアミノ酸は、コラーゲンだけを意識した組み合わせではありません。
まず、コラーゲンは特にグリシンやプロリンを多く含みます。
一方で、エラスチンにはプロリン、グリシンに加えて、アラニンやバリンなども特徴的に含まれています。
つまり、スネコスはコラーゲンとエラスチンの両方を意識した配合になっています。
そして、この組み合わせは「何となく6種類を混ぜました」というものではありません。
配合比を含めた組み合わせそのものが研究され、特許化されています。
いわば、「秘伝のレシピ」のようなものです。
料理でいうなら、みりん、醤油、砂糖を「1:1:1」で混ぜたらおいしかった、みたいなイメージでしょうか。
同じ材料が入っていても、配合比が違えば同じ結果になるとは限りません。
これは美容医療の製剤でも同じです。
なお、美容医療ではよく「コラーゲンを増やす」という言葉が使われます。私も使います。
ただし、皮膚のしなやかさや弾力を考えるなら、コラーゲンだけを見ても十分ではありません。
コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、フィブロネクチン、基底膜。
皮膚は、こうした複数の構造が組み合わさってできています。
アミノ酸は「材料」だけではない
さらに重要なのが、アミノ酸は単なる材料ではないということです。
もちろん、アミノ酸はタンパク質を作る原料です。
しかし一部のアミノ酸は、細胞の代謝や遺伝子発現にも関わります。
たとえばロイシンは、mTOR系のシグナルに関係しています。
そのため、
「アミノ酸=材料」
「ペプチド=刺激」
と完全に二分するのではなく、
アミノ酸は主として材料として使われながら、一部は代謝や細胞シグナルにも関わる
と考える方が現在の理解に近いと思います。
肌育で大切なのは、コラーゲンだけではなく「ECM」
ここで「ECM」という言葉が出てきます。
ECMとは、extracellular matrix、細胞外マトリックスのことです。
キアヌ・リーブスとは関係ありません。
真皮には、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、フィブロネクチンなどが存在し、その中で線維芽細胞が働いています。
以前は、ECMは細胞と細胞の間を埋める「詰め物」のようなものと考えられていました。
しかし現在では、細胞はECMと物理的につながり、周囲の硬さや力学的刺激などを受け取りながら働いていることがわかっています。
つまり、
線維芽細胞だけを刺激すればいいのではなく、その細胞が働く「環境」も重要
なのです。
この考え方は、肌育と非常によくつながります。
当院でも以前から、ECM製剤を「線維芽細胞の機能を維持・改善し、ECMの恒常性を取り戻すことを目指す製剤」として位置づけてきました。
さらに重要なのが「基底膜」
そして、私が最近特に重視しているのが、基底膜と表皮真皮接合部(DEJ)です。
皮膚は大きく見ると、表皮、真皮、皮下組織に分かれます。
その表皮と真皮の境界にあるのが基底膜です。
基底膜は単なる境界線ではありません。
表皮を支える足場であり、表皮と真皮をつなぎ、物質の移動にも関係しています。
ここには、IV型コラーゲンやVII型コラーゲン、XVII型コラーゲンなど、真皮のI型コラーゲンとは別の種類のコラーゲンが存在します。
スネコスに関するin vitro研究では、
- エラスチン
- フィブロネクチン
- I型コラーゲン
- IV型コラーゲン
- V型コラーゲン
- VII型コラーゲン
- XVII型コラーゲン
など、複数のECM関連遺伝子の発現増加が報告されています。
特に、IV型コラーゲンやエラスチンの変化が大きかったことが特徴的です。
ただし、ここは注意が必要です。
これは培養細胞でmRNAの発現を評価した研究です。
そのため、
「スネコスを注射すると基底膜が再生する」
というところまでのエビデンスはありません。
一方で、
基底膜やDEJに関係するECM分子への影響を通じて、皮膚の支持環境の改善に寄与する可能性がある
と私は考えています。
美容医療では、このようにどこまでわかっていて、どこからが仮説なのかを分けて考えることがとても大切です。
スネコスは「肌育」の一つ。肌育=スネコスではありません
ここまで読むと、
「では、肌育=スネコスなの?」
と思われるかもしれません。
もちろん違います。
肌育は、注射の名前ではありません。
スネコスは、肌育という大きな治療設計の中にある、一つの選択肢です。
たとえば、患者さんの肌によってはレーザーが必要なこともあります。
また、赤みにはIPLや血管系の治療が必要かもしれません。
さらに、たるみにはRFやHIFUが適していることもあります。
そして、外用治療が重要な方もいます。
その一方で、皮膚の薄さ、小じわ、乾燥、ハリ、質感などを考えたときには、スネコスのようなECMを意識した注入治療が選択肢になります。
つまり、大切なのは、
「何を注射するか」ではなく、「今この皮膚のどこをターゲットに、何が必要なのか」を考えること。
私はそれを、肌育と呼んできました。
肌育は「今きれいにする」だけではなく、これからの肌を考えること
美容医療には、今ある悩みを改善する役割があります。
シミを取る。赤みを減らす。しわを浅くする。たるみを改善する。
ただ、それだけではなく、
5年後、10年後の皮膚がどうあるか
も考えたいと思っています。
肌は毎日、少しずつ作り替えられています。
だからこそ、その更新がなるべく健やかに続く環境を整えていく。
つまり、今の美しさと、これからの皮膚の健康を同時に考える。
それが、私が考える肌育=Skin Longevityです。
スネコスはその中で、ヒアルロン酸とアミノ酸という非常に基本的な材料を利用して、ECMという皮膚の土台に働きかける治療の一つです。
肌育は、1回の治療の名前ではありません。
皮膚を「ターゲット」と「時間」で考え、その人の肌を長く育てていくための治療設計そのもの。
これからも、新しい製剤や機器が登場するたびに、その治療が皮膚のどこの構造をターゲットにし、どのように作用するのかを考えながら、肌育という考え方を深めていきたいと思っています。

過去のスネコスの記事①
過去のスネコスの記事②
過去のスネコスの記事③
過去のスネコスの記事④
過去のスネコスの記事⑤
過去のスネコスの記事⑥
過去のスネコスの記事⑦
過去のスネコスの記事⑧
過去のスネコスの記事⑨
この記事を書いたのは八重洲形成外科美容皮膚科院長の原かやです
