
「ニュービジュ」
新しい脂肪溶解注射の名前です。
今日ビジュいいじゃん♪っていう曲が頭の中で流れてきます。
さっきスタッフに聞いたらMILKっていう人達の「イイじゃん」って曲らしいです。勉強になる
さて
皆様こんにちは。
八重洲形成外科・美容皮膚科の原かやです。
韓国Medytox社の脂肪溶解注射製剤 NUVIJU(ニュービジュ) について勉強する機会がありました。
脂肪溶解注射にはあんまりいい思い出もなく、現在当院では取り扱いがないのですが、満を持して再チャレンジするか?結構気になる薬剤です。
なんせ、多くの脂肪溶解注射が化粧品カテゴリーであり、注射剤としてちゃんと韓国で承認とってるんです。そこがいい。
脂肪溶解注射というと、皆さん気になるのが
「腫れますか?」
「痛いですか?」
「本当に脂肪は減りますか?」
「たるみませんか?」
ここらへんですね。
脂肪減らす系の治療は、腫れ・痛み・内出血・硬結などの反応も起こりやすい。特に顔まわりでは、ただ脂肪を減らせばよいわけではなく、皮膚のたるみ、筋肉、骨格、リンパや血流、組織の修復過程まで含めて考える必要があります。難しい。
当院ではエネルギーデバイスを使ってボリュームをコントロールすることが多いですが、ニュービジュも新しい選択肢に入るかなと思っています。(試した感じ腫れにくいし。痛みも軽度だし。)
今回のニュービジュは、従来脂肪溶解注射でよく知られているデオキシコール酸ではなく、**コール酸(cholic acid:CA)**を主成分とした脂肪減少注射
私が興味を持ったのは、単に「新しい脂肪溶解注射だから」ではありません。
脂肪を減らす作用だけでなく、組織へのダメージをどうコントロールするかという考え方が入っているように感じたからです。
脂肪溶解注射は、脂肪を「溶かす」だけの治療ではありません
脂肪溶解注射という言葉からは、注射した成分が脂肪をその場で溶かして消してくれるようなイメージを持たれるかもしれません。
しかし実際には、脂肪細胞膜に作用し、脂肪細胞にダメージを与え、その後に起こる炎症反応や組織修復を経て、少しずつ輪郭が変化していく治療です。
資料では、胆汁酸による脂肪減少の機序として、脂肪細胞膜の破壊、脂肪細胞死、細胞内容物の放出、その後の局所炎症、マクロファージによる処理、炎症の収束、組織リモデリング、コラーゲン新生という流れが示されていました。
つまり脂肪溶解注射は、
脂肪細胞に作用する
↓
局所の炎症が起こる
↓
体が壊れた脂肪細胞を処理する
↓
組織が修復される
↓
輪郭が変化する
という治療です。
ここで大切なのは、脂肪を減らす力だけではありません。
その後に起こる炎症、腫れ、痛み、硬結、組織修復がどの程度コントロールされるかが、最終的な仕上がりやダウンタイムに関わります。
デオキシコール酸とコール酸の違い
従来の脂肪溶解注射でよく使われてきた成分に、**デオキシコール酸(DCA)**があります。
デオキシコール酸もコール酸も、どちらも胆汁酸の一種です。
胆汁酸は本来、体内で脂質の消化吸収に関わる成分ですが、濃度や使い方によっては細胞膜に作用し、脂肪細胞を壊す働きを持ちます。
ただし、同じ胆汁酸でも性質は同じではありません。
胆汁酸は、構造によって「水になじみやすい性質」と「脂質になじみやすい性質」のバランスが異なります。
一般的に、脂質になじみやすい、つまり疎水性が高いほど細胞膜に入り込みやすく、細胞傷害性も強くなります。
資料では、胆汁酸の細胞傷害性は、
UDCA < CA(コール酸)< CDCA < DCA(デオキシコール酸)< LCA
の順に高くなると整理されていました。
つまり、デオキシコール酸はコール酸よりも細胞膜への作用が強く、よりアグレッシブな成分と考えられます。
デオキシコール酸は脂肪細胞を壊す力がある一方で、界面活性作用が強いため、脂肪細胞だけでなく、周囲の筋線維、血管内皮、末梢神経などにも非特異的に影響する可能性があると説明されていました。
一方、ニュービジュに使われているコール酸は、デオキシコール酸より親水性が高く、細胞膜への攻撃性が比較的マイルドになる可能性があります。
ざっくり言うと、
デオキシコール酸:脂肪細胞膜を壊す力が強いが、周囲組織への反応も出やすい可能性がある成分
コール酸:脂肪細胞への作用を狙いながら、よりマイルドな組織反応を目指した成分
という理解になります。
美容医療では、単に「強く効く」ことだけが正解ではありません。
特に顔まわりでは、腫れ、痛み、内出血、硬結、炎症の長引き、皮膚の質感変化まで含めて考える必要があります。
その意味で、コール酸製剤であるニュービジュは、脂肪を減らす治療でありながら、治療後の組織反応をどうコントロールするかという視点から興味深い製剤だと感じました。
医薬品として承認されていることの意味
脂肪溶解注射と呼ばれる製剤は、世界中にたくさんあります。
ただ、そのすべてが医薬品として厳密な承認を受けているわけではありません。
中には、医薬品ではなく、化粧品に近いカテゴリーで流通しているものや、製造工程・品質管理の水準が医薬品とは異なるものもあります。
もちろん、医薬品承認があるからすべてが万能というわけではありません。
しかし、有効成分、濃度、製造工程、品質管理、安全性評価、臨床試験というプロセスを経ているかどうかは、医療者として非常に重要なポイントです。
ニュービジュは、韓国で中等度から高度の顎下脂肪に対する脂肪減少注射として、医薬品としての承認を取得している製剤です。資料でも、NUVIJU 1.5%を用いた第3相臨床試験が、ランダム化・二重盲検・プラセボ対照・多施設共同試験として行われたことが示されています。
美容医療では、どうしても「何が入っているか」ばかりに目が行きがちです。
でも実際には、
誰が作っているのか
どの基準で作っているのか
どのような臨床試験を経ているのか
品質管理はどうなっているのか
まで見る必要があります。
脂肪溶解注射は、脂肪細胞膜に作用して局所の炎症反応を起こす治療です。
だからこそ、成分名だけでなく、製剤としての信頼性を見ることが大切です。
Medytoxという会社への信頼感
今回ニュービジュに興味を持った理由のひとつに、Medytoxという会社の開発力があります。
以前、イノトックスについても書きましたが、Medytoxはボツリヌストキシン製剤を長く研究開発してきた会社です。
美容医療の製剤というと、商品名や効果だけが前に出がちですが、その背景には、成分開発、製剤設計、品質管理、臨床開発の積み重ねがあります。
ニュービジュは、コール酸という成分を用いて開発された、Medytoxの化学合成新薬として紹介されていました。
単に既存の成分を混ぜた脂肪溶解注射ではなく、
成分選択から製剤化、臨床試験、医薬品承認まで進めている
という点に、創薬企業としての姿勢を感じます。
イノトックスの時にも感じましたが、Medytoxは単に美容医療製品を販売する会社というより、成分や製剤そのものから開発できる会社です。
脂肪溶解注射は、名前だけ見るとどれも同じように見えます。
しかし、その背景にある開発力と承認プロセスまで見ると、製剤ごとの信頼性には大きな違いがあるのではないかと思います。
第3相試験で示された顎下脂肪への効果
ニュービジュの第3相臨床試験は、中等度から高度の顎下脂肪を持つ成人を対象に行われています。
試験デザインは、ランダム化・二重盲検・プラセボ対照・多施設共同試験。
最大6回、4週間ごとに投与し、最終投与12週後の顎下脂肪の変化や安全性が評価されています。
評価には、医師評価のCA-SMFRSと、患者評価のPA-SMFRSが使われています。
これは顎下脂肪の程度を段階的に評価するスケールです。
結果として、最終投与12週後に、医師評価・患者評価の両方で1段階以上改善した割合は、NUVIJU群で88.57%、プラセボ群で32.43%と示されていました。
また、2段階以上改善した割合は、NUVIJU群で46.67%、プラセボ群で**5.41%**でした。
もちろん、試験結果が良いからといって、すべての方に同じように適応できるわけではありません。
顎下脂肪がしっかりある方には、脂肪減少治療が輪郭改善につながることがあります。
一方で、二重あごに見えていても、原因が脂肪ではなく、皮膚のゆるみ、広頚筋の動き、下顎の骨格、首の皮膚の薄さ、むくみである場合もあります。
二重あご治療は、脂肪だけを見てはいけません。
腫れ・痛み・内出血について
脂肪溶解注射で一番気になるのは、やはりダウンタイムです。
ニュービジュの資料では、有害事象は軽度から中等度で、主なものは注射部位反応、そして多くは7日以内に改善したと説明されていました。
また、動物試験では、1.5%コール酸は1%デオキシコール酸と比較して、浮腫、血腫、潰瘍性皮膚炎、結節形成が少ない傾向が示されています。
さらに、痛みに関わる受容体や神経伝達物質の発現についても、デオキシコール酸製剤と比較して低い傾向が示されていました。
ここはとても大切です。
そして少し使ってみた感じでは、注入時の痛みも熱感も持続も少なく、さらに施術後の冷却することにより不快感もかなり軽減します。
腫れも少ない。
注射治療は、有効成分だけで決まるものではありません。
濃度、pH、浸透圧、添加物、注入量、注入層、注入間隔、そして注入手技によって、体感やダウンタイムは大きく変わります。
同じ「脂肪溶解注射」という名前でも、製剤としての設計が違えば、治療後の反応も変わる可能性があります。
脂肪溶解注射は「入れ方」も変わっていくかもしれません
従来の脂肪溶解注射では、カニューレを用いて広い範囲に製剤を広げる方法が行われることもありました。
カニューレ操作には、血管損傷や内出血を減らしながら面で注入しやすいという利点があります。
一方で、カニューレを動かすことによって皮下組織をある程度剥離し、その刺激や創傷治癒反応も、治療効果の一部として期待されていた面があったように思います。
ただ、最近は私は少し考え方が変わってきています。
皮下組織を機械的に剥離することは、たしかに創傷治癒反応を引き起こします。
しかしその一方で、組織の微小循環を乱したり、必要以上の炎症を起こしたりする可能性もあります。
脂肪を減らす治療では、脂肪細胞への作用だけでなく、その後に起こる炎症、浮腫、内出血、硬結、組織修復の過程まで含めて治療結果になります。
ニュービジュのように、デオキシコール酸よりも親水性の高いコール酸を用い、脂肪細胞への作用を保ちながら、周囲組織への反応を抑えることを目指す製剤であれば、注入手技もまた、強く剥離して創傷治癒を起こす方向ではなく、
細い針で、狙った層に、愛護的に、少量ずつ置いていく
という考え方のほうが、製剤のコンセプトに合っているのかもしれません。
美容医療では、強い刺激を加えればよいというわけではありません。
特に顔まわりでは、脂肪、血管、リンパ、線維性隔壁、皮膚の支持構造が細かく関わっています。
これからの脂肪溶解注射は、
脂肪を壊す治療
から、
脂肪への作用と組織反応をコントロールする治療
へ変わっていくのではないかと感じています。
顎下脂肪の治療は、脂肪だけを見ないことが大切です
私は普段から、たるみ治療や肌育治療を考えるときに、
何を減らすか
何を残すか
何を育てるか
を大切にしています。
若い頃の顔は、ある程度の脂肪があることで、柔らかさや立体感が出ています。
年齢を重ねると、脂肪が減る部分と、下がって集まる部分が出てきます。
そのため、ただ脂肪を減らせばきれいになるわけではありません。
顎下脂肪がしっかりある方には、脂肪を減らす治療が適している場合があります。
しかし、フェイスラインのもたつきに見えても、実際には皮膚のゆるみ、広頚筋の影響、骨格、下顎の後退、首の皮膚の薄さが主な原因であることもあります。
その場合は、脂肪溶解注射よりも、RF、HIFU、ヒアルロン酸、肌育製剤、ボツリヌストキシン、場合によっては外科的治療のほうが合うこともあります。
二重あご治療で大切なのは、
脂肪溶解注射をするかどうか
ではなく、
なぜ二重あごに見えているのかを診断すること
です。
ここを間違えると、脂肪は少し減ったけれど、皮膚が余ってかえって老けて見える、ということも起こりえます。
今回ニュービジュについて勉強して、私が一番面白いと思ったのは、脂肪溶解注射の考え方が少し変わってきていることです。
従来は、脂肪細胞をしっかり壊すことが治療の中心でした。
もちろん、それは脂肪減少治療として重要です。
しかし顔の治療では、強い炎症や組織ダメージが常に良い結果につながるとは限りません。
これからは、脂肪を減らすだけでなく、
腫れをどう抑えるか
痛みをどう減らすか
内出血や硬結をどう少なくするか
微小循環をどう保つか
組織修復をどうきれいに進めるか
まで含めて考える時代になっていくのだと思います。
ニュービジュは、コール酸という成分、医薬品としての承認、創薬企業としてのMedytoxの開発背景、そして脂肪細胞への作用と組織反応のバランスという点で、とても興味深い製剤でした。
脂肪溶解注射は、名前だけ見るとどれも同じように見えます。
でも実際には、成分も、製造工程も、品質管理も、臨床データも、注入手技の考え方も違います。
美容医療では、
何を使うか
だけではなく、
なぜそれを選ぶのか
どのように使うのか
その方の顔に本当に合っているのか
を考えることが大切です。
八重洲形成外科・美容皮膚科では、脂肪、皮膚、筋肉、骨格、肌質を分けて診察し、その方に合った治療をご提案しています。
二重あごやフェイスラインが気になる方も、
「脂肪を減らせばいいのか」
「引き締めたほうがいいのか」
「支えを作ったほうがいいのか」
一緒に考えていければと思います。
ニュービジュ、まだメニューになっていませんがモニター募集など始まるときにこちらでおしらせしますね!
