シミ治療がうまくいっていない人へ レーザーを繰り返す前に知ってほしいこと

 

こんにちは。
八重洲形成外科・美容皮膚科院長でレーザー専門医・指導医の原かやです。

私は長年レーザー治療に携わっており、当院もレーザー指導施設として認定されています。

先日の美容皮膚科学会では、「シミ治療アドバンス」のシンポジウムで、
普段私がどのようにシミ治療を考え、治療を組み立てているかについてお話ししてきました。

美容皮膚科学会シミアドバンスシンポジウム②
美容皮膚科学会シミアドバンスシンポジウム演者の先生と座長の河野太郎先生を囲んで

 

 

 

 

 

 

左から
山本春代先生

河野太郎先生
根岸圭先生
中田元子先生

今回はその内容を、患者様にもできるだけわかりやすく書いてみようと思います。

特に読んでいただきたいのは、

「シミ治療を何度も受けているのに、なかなかきれいにならない」

「レーザーをしたら、かえって濃くなってしまった」

「いろいろな治療を受けてきたけれど、結局何をしたらいいのかわからない」

という方です。

最初にお伝えしたいことがあります。

シミ治療がうまくいっていないとき、

次に考えるべきことは、必ずしも「もっと強いレーザーを当てること」ではありません。

むしろ一度立ち止まって、

なぜ今、良くなっていないのか。

そこを考えることのほうが大切な場合があります。


シミ治療は「茶色いものをレーザーで取れば終わり」ではありません

私はレーザー治療に長く携わっていますが、それでもシミ治療は難しいと思っています。

当院では、シミ治療の中心としてQスイッチルビーレーザーを使用しています。

レーザーの設定そのものは、それほど複雑ではありません。

それでも難しい。

なぜかというと、

同じように見えるシミでも、患者様によって治療後の反応がまったく違うからです。

一度のシミ取りレーザーできれいになる方もいます。

一方で、

  • 炎症後色素沈着(PIH)が強く出る

  • 赤みが長期間残る

  • 一度薄くなったのに、また濃くなる

  • 何度治療しても色が残る

という方もいます。

さらに、一見同じような「シミ」に見えていても、

老人性色素斑、雀卵斑、肝斑、ADM、炎症後色素沈着など、実際には異なる病態が混在していることも珍しくありません。

つまり、

「茶色い=全部同じシミ」ではないのです。

ここを間違えてしまうと、治療を重ねてもなかなか良くなりません。


シミ治療がうまくいかないとき、「メラニン系」と「血管・炎症系」を分けて考える

治療後に、

「なんとなく肌が暗くなった」

「前より悪くなった気がする」

と感じることがあります。

ここで私はまず、

何が悪くなったのかを分解して考えます。

患者様にはわかりやすく、

「茶色が増えたのか、赤みが増えたのか」

と説明することがあります。

もう少し医学的に言えば、

  • 茶色=メラニン・色素系の変化

  • 赤み=血管・炎症系の変化

です。

一見するとどちらも「くすんだ」「肌色が悪くなった」と感じますが、原因が違えば、次にする治療も変わります。

赤みが増えている場合

― 血管・炎症系の反応

治療後に赤みが増えている場合には、炎症がまだ残っていたり、血管反応が強く出ていたりする可能性を考えます。

この状態で、

「まだシミが残っているから」

とさらに強いレーザーを照射したり、短期間に次の治療を重ねたりすることは、私は基本的に避けます。

まず、

今は皮膚が炎症を起こしている時期ではないか

と考えます。

鎮静、バリア機能の回復、摩擦や紫外線の見直しなどを優先し、必要に応じて真皮環境を整える治療を組み合わせます。

茶色が増えている場合

― メラニン・色素系の変化

一方で、本当にメラニンが増えているのであれば、

  • レーザー後の炎症後色素沈着(PIH)

  • 肝斑の再燃

  • 紫外線

  • 摩擦

  • 日常生活による刺激

などを考えます。

この場合には、遮光やスキンケアを見直したり、トラネキサム酸などの内服、外用、エレクトロポレーション、ピーリングなどを選択します。

つまり、

「レーザーをしたら悪化した」

という一言だけでは、次の治療は決められません。

メラニンが増えているのか。

炎症や血管反応が残っているのか。

そこを見分けることが、次の治療を考える第一歩です。


当院では写真だけでなく、皮膚画像解析を使って経過をみています

「メラニン系なのか、血管・炎症系なのか」を人間の目だけで判断するのは、実は簡単ではありません。

そのため当院では、治療前後の写真に加えて、皮膚画像解析装置を使用しています。

メラニン画像とヘモグロビン画像を分けて確認したり、Lab値やITAなどの数値を経時的に追ったりします。

なぜそこまでするのか。

治療途中では、

「なんとなく良くなった」

「なんとなく悪くなった」

という感覚だけでは、次の治療を決めにくいからです。

最終的にきれいになった患者様でも、治療開始から終了まで一直線に改善しているとは限りません。

途中で一時的に赤みが増えたり、

少し色が濃くなったり、

治療を休んだりすることがあります。

大切なのは、

途中で何も起こらないことではなく、小さな変化を見つけて、その都度治療を修正すること。

私はそう考えています。


シミ治療で「何もしない」ことが必要なこともあります

シミを取りたくて美容皮膚科を受診したのに、

「今日はレーザーをしません」

と言われたら、

少しがっかりしますよね。

でも私は、初診ですぐにシミ取りレーザーをしないことがあります。

たとえば、

  • 肝斑が強い

  • 肌に赤みや炎症がある

  • 他院でいろいろな治療を受けていて現在の状態がわかりにくい

  • 日焼けをしている

  • 摩擦などによる刺激が強い

という場合です。

まず内服や外用、遮光、摩擦を避けることなどから始めて、1〜2か月ほど肌の変化をみることがあります。

患者様からすると、

「シミを取りに来たのに薬だけ?」

と思うかもしれません。

でも、

皮膚の状態によっては、積極的に介入しないこと自体が治療になる時期があります。

美容医療では、何かを追加することばかりが治療ではありません。

今は触らない。

今は待つ。

その判断も、私は治療の一部だと思っています。


肝斑は「メラニンが多いだけの病気」ではありません

シミ治療がなかなかうまくいかない患者様で、非常によく問題になるのが肝斑です。

私は肝斑に関しては、かなり慎重です。

基本的には、

肝斑そのものをレーザーで積極的に追いかけません。

なぜかというと、肝斑は単に「メラニンが増えている状態」だけではないと考えられているからです。

肝斑の皮膚では、

  • メラノサイトの活性化

  • 基底膜周囲の障害

  • 真皮の光老化

  • 血管の増加

  • 炎症に関連する変化

など、複数の要素が関わっています。

つまり、

メラニンだけを壊せば解決する病態ではない

ということです。


レーザーのパラメータを「こねくり回す」より、考えたいこと

もちろん、レーザー治療では波長やパルス幅、フルエンスなどの設定はとても重要です。

単純な老人性色素斑などでは、どの波長で、どの程度のエネルギーを入れるかを考えることには大きな意味があります。

でもなかなか改善しない病変に対して、

「どの波長がいいのか」「パルス幅をどうするのか」と、レーザーのパラメータばかりをこねくり回すよりさっさと別のアプローチをした方がいい

……おっと、ちょっと本音が漏れてしまいましたね

もちろん、レーザーのパラメータを検討すること自体は大切です。

ただ私は、

肝斑や治療を繰り返しても改善しない色素沈着では、レーザーの波長やパルス幅を細かく調整することだけで解決しようとするより、基底膜や真皮環境、炎症・血管反応まで含めて皮膚全体を整える発想のほうが重要ではないか

と考えています。

つまり、

「どうやってメラニンをもっと上手に壊すか」だけではなく、
「なぜこの皮膚では色素沈着が繰り返されるのか」を考える。

ここが、単純な老人性色素斑の治療と、肝斑や難治性色素沈着の治療との大きな違いだと思っています。

そう考えると、

メラニンだけをレーザーで繰り返し叩くのではなく、

基底膜や真皮環境を整える。

炎症を抑える。

血管系の反応を見る。

そして必要な色素だけをレーザーで狙う。

こうした多方向からの治療のほうが、病態に合っているのではないかと思います。

 

美容皮膚科学会シミアドバンスシンポジウム①
シミアドバンスシンポジウム演者の先生方と

 

 

 

 

 

 

 

 


だから肝斑では、レーザー以外の治療も考えます

肝斑がある場合には、まず内服・外用、遮光、摩擦回避などで皮膚を安定させます。

そのうえで、混在している明らかな老人性色素斑などがあれば、Qスイッチルビーレーザーで狙います。

照射する際にも、肝斑の部分はできるだけ避けます。

一方で、

肝斑の背景にある皮膚環境そのものを整える

という目的で、ニードルRFなどを選択することもあります。

ニードルRFは、色素を直接破壊する治療というよりも、真皮を刺激してリモデリングを起こし、基底膜周囲や真皮環境の改善を狙う治療です。

私は、

「シミを壊す治療」と「シミができやすい皮膚環境を整える治療」は別のもの

として考えています。

そして肝斑や難治性色素沈着では、後者の考え方が特に重要なのではないかと思っています。


「一度で取る」ことだけをシミ治療のゴールにしない

もちろん、1回のシミ取りレーザーできれいになれば理想的です。

でも自費診療なので、患者様にとっては治療回数がそのまま費用にもつながります。

だからこそ、

できるだけ少ない治療回数で良くしたい。

これは私も同じです。

ただし、

「一回で取る」ということを最優先にして、肌を悪化させてしまっては意味がありません。

この患者様の肌なら、

すぐにレーザーをするのか。

先に肌を整えるのか。

スポット照射にするのか。

フラクショナルにするのか。

一度休むのか。

私はその順番を考えます。

結果として少し遠回りに見えることもあります。

でも、

最短距離に見える治療が、その人の肌にとって本当の最短距離とは限りません。


シミだけではなく「シミができている肌」を治療する

ここが、今回の学会講演でもお話ししたかったことのひとつです。

従来のシミ治療は、

メラニンをレーザーで壊す

という考え方が中心でした。

もちろん、それは今でも非常に重要です。

ただ私は最近、

「シミができている皮膚側の環境」も一緒に考える必要がある

と思っています。

当院では必要に応じて、

  • スネコスやジャルプロなどの非架橋ヒアルロン酸とアミノ酸の製剤

  • ニードルRF

  • ピーリング

  • エレクトロポレーション

  • 1927nmフラクショナルツリウムレーザー

  • 内服・外用療法

などを組み合わせます。

これは、

「シミ治療には、いろいろな施術を追加したほうがいい」

という意味ではありません。

それぞれ目的が違います。

メラニンを直接ターゲットにする。

炎症を抑える。

メラニンを作りにくくする。

排出を促す。

真皮のECM(細胞外マトリックス)を整える。

違う方向から皮膚環境を整えていく

という考え方です。


基底膜が傷むと、色素沈着が長く残ることがあります

ここから少し専門的なお話をします。

皮膚には、表皮と真皮の境界に「基底膜」という構造があります。

肝斑の皮膚では、この基底膜周囲の障害が報告されています。

基底膜が障害されると、本来表皮にあるメラニンが真皮側へ落ちることがあります。

真皮に落ちたメラニンは、マクロファージという細胞に取り込まれ、「メラノファージ」として残ります。

ここで問題なのは、

真皮には、表皮のようなターンオーバーがない

ということです。

表皮にあるメラニンであれば、皮膚のターンオーバーとともに徐々に排出されます。

しかし真皮まで落ちたメラニンは、非常に長く残る可能性があります。

これが、

「シミ取りレーザーをした後の色素沈着がなかなか消えない」

「何か月も茶色い色が残っている」

という症例の一部に関係している可能性があります。


炎症後色素沈着(PIH)が長引いている場合に考えること

シミ取りレーザー後の炎症後色素沈着、いわゆるPIH。

これは珍しいことではありません。

ただ、非常に長く続く方がいます。

PIHでも、

表皮のメラニンが増えている状態と、

炎症によって基底膜が障害され、メラニンが真皮まで落ちている状態では、経過が違います。

さらに炎症や刺激が繰り返されると、

基底膜がまた障害される。

新しいメラニンが真皮へ落ちる。

炎症によってメラノサイトも活性化する。

という悪循環になる可能性があります。

そのため私は、長引くPIHに対して、

① 新しいメラニンをなるべく作らせない

② すでにあるメラニンの排出を促す

③ 炎症を抑える

④ 真皮環境を整える

という複数の方向から考えます。


1927nmツリウムレーザーを使うこともあります

顔全体のくすみやPIHが残っている場合には、1927nmのフラクショナルツリウムレーザーを使用することがあります。

1927nmツリウムレーザーでは、皮膚に非常に細かな凝固帯を作り、その後の組織の排出に伴って周囲のメラニンを皮膚表面方向へ移動させる「メラニンシャトリング」という現象を利用します。

ただし、

PIHがあるから、すぐ1927nmレーザーを照射する

というわけではありません。

1927nmレーザー自体も熱刺激を伴う治療ですから、皮膚に炎症が残っている状態で治療すれば、かえってPIHを悪化させる可能性もあります。

肌の状態が落ち着いてから使う。

ここでもやはり、

何をするか以上に、いつするかが大切です。


肌育治療とシミ治療は関係があるのでしょうか

これも今回の学会でお話ししたテーマです。

私は最近、真皮のECMや基底膜周囲の環境を整えることが、シミ治療にも関係するのではないかと考えています。

スネコスなどで使用される非架橋ヒアルロン酸とアミノ酸の組み合わせでは、基底膜周囲に関係するコラーゲンの発現について研究されています。

ただし、ここは誤解のないように書いておきます。

スネコスを注射することで、肝斑の基底膜が修復されることが証明されているわけではありません。

現時点では、ここにはまだ仮説が含まれます。

ただ、

真皮ECMを整えることで基底膜周囲の環境が安定し、

新しいメラニンが真皮側へ落ちにくい皮膚環境をつくることができるのではないか。

私はそう考えています。

つまり、

すでにあるシミを壊すだけでなく、新しい色素沈着を起こしにくい肌の土台をつくる。

「肌育」という考え方は、こういうところでもシミ治療とつながってくるのではないかと思っています。


最近はシミ治療でも「過去に何を注入したか」を確認します

もうひとつ、最近特に気をつけていることがあります。

それが、

過去の注入治療歴です。

現在は、ヒアルロン酸フィラーだけではなく、さまざまなバイオスティミュレーターや肌育製剤などが広く使われています。

そのため私は、レーザーやRFなどのデバイス治療をする前に、

いつ、どこに、何を注入したのか

をできるだけ確認するようにしています。

過去に注入治療を受けているからレーザーができない、という意味ではありません。

ただ、何らかの刺激をきっかけに、遅れて炎症反応が表面化する可能性については考えておく必要があります。

美容医療をいろいろ受けることが当たり前になった現在では、治療歴全体を見ることが以前より重要になっていると思います。


シミ治療がうまくいっていないなら、一度治療を整理してみる

何回もレーザーをしている。

IPLもした。

トーニングもした。

ピーリングもしている。

それでもシミが良くならない。

そんなとき、

さらに新しい機械や新しいレーザーを探したくなる気持ちはよくわかります。

でも、治療を追加する前に一度、

今の肌で何が起きているのか

を整理してみてもいいかもしれません。

肝斑なのか。

老人性色素斑なのか。

ADMなのか。

PIHなのか。

メラニン系の問題なのか。

血管・炎症系の問題なのか。

過去の治療による影響はないのか。

そして、

今、本当にレーザーを当てる時期なのか。

そこからもう一度考えます。


私が目指すシミ治療は「一番強い治療」ではありません

私はQスイッチルビーレーザーをたくさん使います。

ルビーレーザーはとても優れた治療です。

必要なシミには、しっかりルビーレーザーを使います。

でも、

レーザーを使えることと、

今レーザーを使うべきことは、

同じではありません。

強く治療したほうがいい人もいる。

少しずつ治療したほうがいい人もいる。

先に肌を整えたほうがいい人もいる。

そして、

今は何もしないほうがいい人もいます。

だから私が目指しているのは、

「一番強いシミ治療」ではなく、その人の肌に合った治療を、その時に必要な順番で行うこと。

です。


シミを見るのではなく、「シミができている肌」を見る

 

シミを見るのではなく、シミができている「肌」を見る。

シミ治療は、レーザーを照射した日だけの治療ではありません。

治療前に肌を整えること。

治療後の赤みや色素沈着をみること。

必要なら治療計画を変更すること。

何もしない時期をつくること。

それも全部含めてシミ治療です。

だから私のシミ治療のカウンセリングは、

かなり長いです(笑)。

初診で一度治療計画を立てますが、その計画通りに最後まで進むとも限りません。

経過を見て、

写真を見て、

皮膚解析のデータを見て、

そのたびに考え直します。

評価する。治療する。また評価する。

シミ治療はこの繰り返しです。

もし、

「シミ治療をいろいろ受けているのに、なかなか良くならない」

と感じているのであれば、

次の治療を追加する前に、一度今までの治療歴と現在の肌の状態を整理してみることをおすすめします。

そのうえで、

今取るべきシミは取る。

今触らないほうがいいものは触らない。

そして、

シミだけではなく肌全体を少しずつ良い方向へ育てていく。

それが、現在の私のシミ治療の考え方です。

原かや
この記事を書いたのは八重洲形成外科美容皮膚科院長の原かやです