美容医療は「効いている」だけでは足りない?―私が考える「認識閾値」の話

期日を三日すぎてしまってようやく脱稿しました。

ご迷惑おかけして申し訳ありません。
連日寝不足の私に夫から、「こだわりすぎないでとりあえず終わらせるのがいいのでは?」とまっとうな指摘がありました。

ベストはこだわりぬいて期日に終わらせることですね。
でもね。せっかく私に依頼してくださるお仕事、徹底的にこだわりたいじゃないですか。原に頼んでよかったって思ってもらいたい。
難しいですねぇ。一日40時間くらいほしい。30時間でもよいけど。

スネコスの長期経過

 

 

 

 

そんなこんなで最近の学会でも話した「認識閾値」の話

美容医療の新しい製剤について、論文とかで

「線維芽細胞を活性化した」

「コラーゲン産生が増加した」

「炎症を抑える作用が確認された」

といった研究結果を目にすることがあります。

こうした研究の中には、培養した細胞を用いたin vitro(インビトロ)研究も多くあります。

もちろん、これは製剤の作用を理解するための大切な研究です。

でも、ここで一つ考えなくてはいけないことがあります。

細胞に変化が起きたことと、実際の患者さんが「肌が変わった」と感じることは、同じではないです。

変化があっても、気づけないことがある

たとえば治療後、肌の状態を画像解析装置で測定すると、赤みや毛穴、肌理などの数値が少し変化していることがあります。

けれど、その変化が小さければ、

「何となくいい気はするけれど、よく分からない」

ということもあります。

逆に、変化がある程度の大きさになると、

「肌がきれいになった」

「毛穴が目立たなくなった」

と本人が感じたり、周囲から変化に気づかれたりします。

私は、この**「変化として認識できるライン」**を、美容医療における「認識閾値」と考えています。

心理物理学には、違いを認識できる最小の差を「弁別閾」と呼ぶ考え方があります。それを美容医療にも当てはめて考えてみました。

どうすれば「認識閾値」を超えられるのか

ここが、実際の美容医療ではとても重要です。

一回の施術で起こる変化が小さくても、適切な間隔で施術を重ねることで、変化が積み重なっていくことがあります。
(適切な刺激を同時に多方向から重ねることでも認識閾値を超えられることもあります。)

ただし、単純に回数を増やせばよいわけではありません。

その製剤は何を目的として作られているのか。

どの組織に、どの深さで使用するのか。

どんな肌の状態に向いているのか。

どのくらいの間隔で治療するのか。

製剤をよく知り、適応を見極めることが大切です。

場合によっては、一つの治療を繰り返すよりも、異なる目的の施術を組み合わせた方がよいこともあります。

「作用する」から「実感できる」までを考える

美容医療では、新しい成分や作用機序が次々と報告されます。

でも、論文で細胞レベルの変化が示されたからといって、そのまま患者さんの見た目の変化を意味するわけではありません。

「作用する可能性がある」ことと、「実際に変化として認識できる」ことの間を、どうつなぐか。

そこに、製剤選択や治療設計をする医師の役割があるのだと思います。

 

 

しかし人生ずっと学びですね。息を吸うように学び続けないと時代に取り残されていく気がします

原かや
この記事を書いたのは八重洲形成外科美容皮膚科院長の原かやです